光で表情を変える
「漆黒メッキ」誕生秘話
ピーエムシーが提案する、
新しいカスタムの哲学。
登場から50年以上の年月を経ても、なお驚異的な稼働率を誇るZ。
その存在は、もはや単なるバイクではなく、一つの文化として生き続けている。
しかし、いかに頑強な車体であっても、パーツ供給なくしてその命脈を保つことはできない。
その支えとなっている企業が、淡路島にあるPMCだ。Z乗りであれば、その名を知らない者はいないだろう。
だが、その裏側――どのようにしてパーツが生まれているのか。
そこに、どんな想いが込められているのか。
今回話を聞いたのは、そんなPMCで商品開発を手がける清水さんだ。
Zという文化の命脈を支える拠点、淡路島のPMC。
清水さんがバイクの道を志したのは高校生の頃。
当時は整備士を夢見ていたが、一度はその道を断念することになる。
しかし、バイクへの想いは消えなかった。
大阪での生活を経て、再び地元・淡路島へ。そこで出会ったのがPMCだった。
バイクに関わる仕事がいいなと思って。一回受けてみようと思ったのがきっかけですね
偶然のようでいて、必然のような流れ。
バイクへの想いが、再びその道へと導いた瞬間だった。
そしてもう一つ、彼の中には強く残っていたものがある。それが、Zという存在だ。
少年時代に雑誌や漫画で見た“主役機”としてのZ1やZ2への憧れが、
色褪せることなく残り続けていた。
PMC 商品開発担当・清水さん。その眼差しは常に「ユーザー視点」にある。
現在,清水さんはZ系パーツの開発を担当している。
その開発スタイルは非常にシンプルだ。
「自分が乗った時に、どう見えるか」を基準に考える。
作り手でありながら、同時に一人のユーザーとして、
自分のバイクに置き換えて形にしていく。
自分が乗ってるからこそ、考えられる部分も多いですし
その言葉からは、単なる“開発業務”ではない、
バイクそのものへの純粋な楽しさ、愛おしさが伝わってくる。
そんな中で生まれたのが、「漆黒シリーズ」だ。
きっかけは、試作品のグラブバーに施されたメッキを見た瞬間だった。
光の当たり方で表情を変える、深みのある黒。
それまでのブラックパーツとは明らかに違う質感に、清水さんは直感した。
そこから始まったのが、漆黒シリーズの開発だった。
それは新たなカスタムというより、新たな“見せ方”の提案だった。
削り出しでもない。純正でもない。
そのどちらでもない、新しい表現. それが漆黒メッキだったのだ。
造形の複雑なキャブレター周辺パーツでも、漆黒メッキはその特有の深みを見せる。
この独特の質感を生み出しているのが、
「漆黒調三価クロメート」という特殊な表面処理だ。
朝、夕方、屋内と、光の当たり方や時間帯によって見え方が変わり、
同じパーツでも異なる表情を見せてくれる。
しかし、この処理はどこでもできるものではない。
施工可能な工場が日本国内でもごくわずかに限られているうえに、
「再メッキが極めて困難」という大きな特徴がある。
すなわち、傷が入った場合は、基本的には「交換」という選択になる。
一見すると不便に思えるかもしれない。
しかしそれは、この輝きが
“限られた環境でしか成立しない特別な処理”である証でもある。
愛を持って扱ってもらえたら嬉しいですね。
簡単にやり直せるものではないからこそ、
一つひとつに価値が宿るんです
清水さんの言葉には、このパーツに対する強い自負と想いがにじんでいた。
ライダーの視界に常に入るハンドル周りだからこそ、質感には徹底してこだわる。
「やっぱりZって、昔からいろんなカスタムが出てるんですよ。
正直、やりきったって人も多いと思うんです」
一通りやり尽くし、一度は別のバイクへ。
しかし、それでもまたZに戻ってくるのがオーナーたちの性だ。
“こんなのまだあったんや”って思ってもらえたら
漆黒シリーズは、Zカスタム再燃のきっかけを願って生まれたのだ。
昨年の東京モーターサイクルショー。初お披露目となった漆黒ブースは多くの熱気に包まれた。
来場者に直接パーツの魅力、そして「新しいカスタムの提案」を伝える清水さん。
「頑張って製作をしているんですけど、
特殊な製法なので時間がかかってしまって。すいません」
と、清水さんは申し訳なそうに言う。
簡単には作れない。数も多くは出回らない。
だからこそ、手にした人はそれを大切に扱う。
Zというバイクへの憧れ、そして「どう見せるか」という新しい哲学。
そのすべてが込められた、一つの表現なのである。
清水さん(PMC 商品開発担当)
幼少期からのバイクへの情熱を胸に、淡路島のPMCにてZシリーズを中心としたパーツ開発に従事。ユーザー目線に立った製品作りで、全国のZオーナーから厚い信頼を寄せられている。